【書評】ヒトクイマジカル 殺戮奇術の匂宮兄妹

 ヒトクイマジカルとは何だ……? 人食いでマジカル。人を食うマジカルさん? それとも、秘匿今 時価る? 最後は絶対にないんですけど、急にこの文字列を見たとろこで何だか分からないだろう。
 本著は化物語(物語シリーズ)、掟上今日子の備忘録を生み出した西尾維新先生の処女作、戯言シリーズの第5弾である。ジャンルとしての分類はミステリだと思うが、シリーズを追う毎にエンタメとなっていく感じだろうか。本シリーズは化物語のように各巻毎にタイトルが違う。第1巻「クビキリサイクル」第2巻「クビシメロマンチスト」と、タイトルが各巻の内容を象徴しているのだ。分かりやすい。

 と、いう事で本書の書評とは名ばかりの感想等々を書いてみたいと思います。前半はネタバレ無し、後半はネタバレありです。ちなみに本シリーズを読みたいと思った方は第1巻から読むのがオススメですが、各巻毎に他の巻のネタバレはあまり無いようになっているので、ヒトクイマジカルから読んでも楽しめるかと思います。

 ヒトクイマジカル 殺戮奇術の匂宮兄妹
 著者:西尾維新 イラスト:竹

 これは人食いの物語だ。

 ヒトクイマジカルは京都にある某大型ホテル内の喫茶店で主人公(通称:いーちゃん)と木賀峰約(きがみねやく)助教授が会話している場面から始まる。否、それは交渉と云うべきか。木賀峰助教授はいーちゃんに対し、自身の研究に関するモニターのバイトを依頼したいというのだ。断ろうとしつつもその場は返答保留とするのだった。

 実はこの木賀峰約助教授は電話番号を一部の人物にしか教えていないといういーちゃんに電話をかけて来た人物なのだ。そんな助教授に警戒心は抱いていたはずだ。しかも口癖が「あなたが――だろうことを、この私はあらかじめ予測していました」ですよ。怪し過ぎます。私だったら「予測やめい!?」とリアクションしてしまうかもしれません。物語上の必然性があったとはいえ、そのバイトを最終的に引き受けてしまったのですが、バイト代が良かったとかそういう理由もあるとは思いますが、いーちゃんのリスク許容度がだいぶ一般人と比べて高すぎるんですよね。女装して女子高に潜入したり、殺人鬼と意気投合したり……いそもそも、いーちゃんの周りには変人奇人殺人鬼しか集まらないと言っても過言ではないので、そもそも変人が好きだという説もあるような……。

 いーちゃんが帰宅すると、そこには一週間前からの同居人である春日井春日(かすがいかすが)が出迎えた。但し、後ろには高級寿司と、マント姿の少女が倒れている……。

 情報量が多過ぎる!? 情報の渋滞だ。事件の香りがする。
 しかし彼女の職業が一番ぶっ飛んでいる。
【匂宮理澄 職業:名探偵】
 名探偵!? 名探偵という職業がある!?
 ここで気付いた方もいらっしゃるかと思いますが、サブタイトルに出て来たのが匂宮兄妹の妹担当。名探偵の匂宮理澄。きゃぴきゃぴで変な少女なんですけどね、かわいいんですよ。名探偵と云うだけあって実は有能なはずなんですけど、いーちゃんといる時はそんな事を感じさせないくらい元気で天然なんですよね。お嫁さんにしたいくらいです。
 まぁ、サブタイトル通り本作には匂宮兄妹の兄の部分もちゃんと登場するのです。理澄ちゃんと違って、暴虐な殺し屋が出夢君です。

 助教授:木賀峰約
 名探偵:匂宮理澄
 殺し屋:匂宮出夢

 肩書からして、凄い面々が集まっているような期待感がありますよね。
 他にも前巻以前より登場しているキャラから新キャラから色々な魅力的なキャラが登場しますので、気になった方は読んでみてはいかがでしょうか?
 なぜ僕が戯言シリーズの6巻であるヒトクイマジカルの紹介をしているのかといえば、戯言シリーズの中でヒトクイマジカルが一番好きなんです。もう10年以上前に読んだのが最初なんですけど。登場するキャラから、表紙から、だいたい全部好きなんです! 戯言シリーズを読み返そうかなと思った時はだいたいヒトクイマジカルを読みます。単行本もいいですけど、文庫本版の表紙がかわいいんですよね。理澄ちゃん、メガネ、マント、牙。その可愛く凶暴になりきれない姿は魔女のようなドラキュラのようなコスプレを想起させます。まぁ、拘束衣なんですけどね。そしてこの本、実は4.5cmくらい厚さがあるんですよね(笑) 読むも良し、見るも良し、持つも良しという訳です(笑)
 実はこの表紙、リバーシブルとなっていて裏返すと出夢くんがいるんですよ。凶暴なはずなんですけど、舌を出した笑顔ががかわいいですね。まぁ、この表情で殺されると思ったら相当怖いですけどね。
 更に更に、表紙を1枚めくるだけで請負人:哀川潤と女子高生:紫木一姫のイラストが掲載されているのですよ。けん玉を持った姫ちゃんの笑顔が眩しくて僕が消し飛びそうですね!? 潤さんは脚が長過ぎです。姫ちゃんの身長が潤さんの腰くらいまでしかないですよ!? スタイルが良くてセクシー、といったところでしょうか。
 まぁまぁ、そのイラストもそうですが、表紙とロゴも赤と緑を基調に作られているので、もうこれだけで作品に引き込まれてしまいますよね。竹さん神です。

 さぁ、後半になってまだ内容に一切触れていませんが(笑) ここからちょくちょくネタバレを入れていきます。

 この小説は何よりも序章ですらない独白部分がかっこいいですよね。全人類にそこだけでも読んでほしいくらい大好きです。

 西尾維新先生、もう 〇〇ただし〇〇みたいな! っていう表現気に入ってますね(笑) 巫女子ちゃん回想とはいえ再登場、からの3連発は圧巻ですね! まぁ、回想から現代へ意識は戻り木賀峰助教授が出てくる訳ですが、序盤としてもインパクトは凄いですよね。口癖といい、死なない研究といい、読者の期待は少しずつ高まっていきますよね。

 理澄って名前からいいですよね。リズムも良いし、イズムっていうのもスタイリッシュで格好いい。最初に理澄ちゃんが登場した時、度肝を抜かれましたよ。だって拘束衣ですよ!? 着た事もなければ見た事すらないですよ。どうやって生きて行くんだろうって想像してみましたけど、怖くなってやめた記憶があります。

 ちなみに、バイトには姫ちゃんと春日さんを連れて参加するんですよね。まぁ、こんな怪しいバイトに普通行くか? って思うかもしれませんが、お金が必要になってバイトに行っちゃうのが物語の主人公なんでしょうね。多少作品になぞらえて云うなら、運命というべきか。皆さんは主人公になりたいからって明らかに怪しいバイトに行っちゃ駄目ですよ☆

 シリーズにおけるラスボスポジションである西東天(さいとうたかし)が登場するのもこの巻ですね。思わせぶりな事ばかり言うんですけど、そういえばこの人自体は大したこと出来ないんじゃなかったでしたっけ……。これはシリーズ最終のネコソギラジカルも読み返したいですね。

 バイト先で理澄ちゃんと姫ちゃんが死んじゃうのはとてもショックでしたね。そこまでする事はないんじゃないかと思いましたけど、もともと戯言シリーズは魅力的なキャラクターをばんばん出しつつもあっけなくばんばん死んでいったりしますからね。いつ死んでもおかしくないというのは、物語でも現実でも一緒という事ですね。しかし、不老不死である所の朽葉円(くちはまどか)が死んでしまうというのも、何だか悲しいものですね。まぁ「不老であって不死ではない」とはUQホルダーの敵っぽい奴が言っていた事ですが、まさにそれだったのでしょう。死なない人間が死んでしまうというのは、何だか象徴的ですね。

 さて、いかかでしたでしょうか。
 ヒトクイマジカルの魅力が少しでも伝われば幸いです。今後も他の書籍の書評的な感想文的なものも書いて行きたいと思います。
 では、本日もありがとうございました。

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